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※沖縄で出版されたことから、書名に「沖縄」とついていますが、内容は世界の有毒動物を対象にしています。 咬症 (かまれた) 1982年 発行時の内容です ムカデ類 -----------------------『有毒害生物大事典』より抜粋 ムカデ類は、漢字では《百足》と書くが、不思議なことに外国でも、ムカデのことを 《センチピード》 centipede 「百足」と 呼んでいる。実際の足の数は、少ないものでは、15対(30本)しかないが、多いものでは177対(354本)もあって、 確かにムカデ類は、《百足》の名を恥ずかしめないことが判明した。 昔から人間に嫌われ、恐れられてきたムカデ類は 《節足動物》 Arthropoda の《唇脚綱》 Chilopoda の《オオムカデ目》 Scolopendromorpha に属し、世界中には 3,000種 くらい知られているが、大型種はすべて熱帯・亜熱帯地域に生息している。 しかしわが国には、15種類のオオムカデ類 が分布しているに過ぎない。 ムカデ類は多くの《体節》からなり、各節には一対の《歩脚》をもっている。すべて肉食性で、昆虫やクモ類などを捕食する が、大型の種類ではネズミやカエルなどを襲って食べる。
ムカデによる咬症(こうしょう) --------------------『有毒害生物大事典』より抜粋 ムカデ類の一番前の《歩脚》は、中空の鋭い牙が、その根元につながっている。この武器は、餌を殺すためと、防御の ためにそなえられているが、時には人間を咬むこともある。昔からムカデ類は、猛毒をもつと信じられ、極端に恐れられて きたが、毒は 《サソリ毒》 に似てはいるが、人命に関わるような 《致命毒》 ではないので、それほど恐れることはない。 わが国最大のムカデは、本州から沖縄・台湾・中国本土まで分布する「トビズムカデ」 Scolopendra subspinipes mutilans で、体長15センチくらいのものが見られるが、このように大きなものに咬まれても、痛みは激しく、患部が大きく腫れるが その他の重い症状はあらわれることは少ない。(日本産の種においては…)
毒は、無色透明の液体で、《ヘモリシン》 Hemolysine /《サッカラーゼ》 Saccharase /《ヒスタミン》 Histamine / 《ハイアルロニダーゼ》 Hyaluronidase /《フォスフォリパーゼ》 Phospholipase などを含み、激しい痛みは 《セロトニン》 Serotonine によって起こると考えられている。脊椎動物に対しては 《中枢神経毒》 として働き、呼吸麻痺によって死亡する が、《出血毒》 の作用も見られる。すなわち、致死量以下の毒量が注入された場合には、浮腫や潰瘍・壊死が起こる。 また、全身症状としては、発熱が見られることもある。 ムカデによる咬症は、東南アジアやニューギニア・北米・南米など で多く発生しているが、通常咬まれると激しく痛むとともに、リンパ管やリンパ腺に炎症を起こす。そして、腫脹や圧痛が 受傷後三週間も続くことがある。 死亡例としては、フィリピンで子供が頭部を咬まれて、29時間後に死亡したのが唯一の 記録で、米国アリゾナ州の死亡例は、二次感染によるものとされている。
ムカデ咬症(こうしょう)の治療法 --------------------『有毒害生物大事典』より抜粋 ※ 応急手当: 咬まれたらすぐに、《アンモニア水》 を塗れば痛みはやわらぐ。 ◆ 痛みが激しい時には、《プロカイン》 Procaine やその他の局部麻酔剤を、局所に浸潤させれば容易になおる。 ◆ 《コーチゾン》 Cortisone 75ミリグラム、およびそれと同力価の《ステロイド》 Steroid を、咬傷後24時間の間 投与すれば有効である。 ◆ 二次感染による予防も考慮する。
→以上、『有毒害生物大事典』より抜粋
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※ 治療・対処方法につきましては『有毒害生物大事典 動物編』に詳しく記載されています。 『有毒害生物大事典』の詳細はこちらをご覧ください。 ≫生物情報社
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